WordPressを複数人で運用する際、最も基本的でありながらセキュリティの要となるのが「ユーザー権限グループ(ロール)」の適切な設定です。
「とりあえず全員に管理者権限を渡している」
「外部のライターや制作会社にどんな権限を渡せばよいかわからない」
「寄稿者と投稿者、編集者で何が違うのか把握しきれていない」
このような運用を続けていると、誤操作によるサイト崩壊や、アカウント乗っ取り・情報漏洩といった取り返しのつかない重大なトラブルに発展しかねません。WordPressには標準で5つの権限グループが用意されており、それぞれの役割に応じた機能制限が精密に設計されています。
この記事では、WordPressの5大権限グループ(管理者・編集者・投稿者・寄稿者・購読者)の違いを分かりやすい一覧マトリクス表で徹底比較し、セキュリティを高める「最小権限の原則(PoLP)」に基づいた実践的な運用ルール、プラグインを使った権限のカスタマイズ、開発者向けのセキュアな権限判定コードまで網羅して解説します。
【一覧比較表】WordPressの5大ユーザー権限グループとできることマトリクス
WordPressの標準ユーザー権限グループは、上位から「管理者」「編集者」「投稿者」「寄稿者」「購読者」の5つに分かれています(マルチサイト運用の「特権管理者」を除く)。
まずは、各権限グループが持っている主な操作権限を一覧表で確認しましょう。
| 権限グループ | サイト全般設定 | テーマ/プラグイン管理 | 他人の投稿編集/削除 | 自作投稿の直接公開 | メディア追加(画像等) | 記事下書き作成 | コメント投稿 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 管理者(Administrator) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 編集者(Editor) | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 投稿者(Author) | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 寄稿者(Contributor) | × | × | × | × | △(標準は不可) | ○ | ○ |
| 購読者(Subscriber) | × | × | × | × | × | × | ○ |
※寄稿者のメディア追加は、WordPress標準では不可となっていますが、後述するプラグインやカスタマイズによって安全に許可することが可能です。
ここからは、各権限グループの特徴と具体的な権限内容を詳しく見ていきましょう。
1. 管理者(Administrator):サイト全設定・プラグイン・ユーザー管理の最高権限
管理者(Administrator)は、WordPressサイトに関するすべての操作を実行できる最高権限です。
主な権限内容は以下のとおりです。
- WordPressコアの更新、一般設定、表示設定、パーマリンク設定などのサイト全体設定の変更
- テーマのインストール・有効化・編集・削除
- プラグインのインストール・有効化・設定・停止・削除
- 新規ユーザーの追加、既存ユーザーの編集、権限変更、アカウント削除
- すべての投稿・固定ページ・カスタム投稿の作成・編集・公開・削除
- ファイル編集やデータベース関連のエクスポート/インポート操作
サイトの立ち上げや保守に欠かせない権限ですが、サイト全体を完全に掌握・改変できるため、セキュリティ上の最重要防衛ラインとなります。悪意のある第三者に管理者アカウントを乗っ取られた場合、バックドアの設置や全データの破壊・改ざんが容易に行われてしまいます。そのため、管理者アカウントを付与する対象は厳格に限定しなければなりません。
2. 編集者(Editor):他ユーザーの投稿を含む全コンテンツの公開・編集・削除
編集者(Editor)は、コンテンツ管理に関するすべての権限を持つロールです。
主な権限内容は以下のとおりです。
- 自身が作成した記事・固定ページの作成・編集・公開・削除
- 他のユーザー(投稿者・寄稿者・管理者含む)が作成した記事・固定ページの編集・公開・削除
- カテゴリーやタグの新規作成・編集・整理
- メディアライブラリへの画像・ファイルアップロードおよび削除
- 読者から投稿されたコメントの承認・編集・スパム判定・削除
- 非公開記事やパスワード保護記事の閲覧・管理
一方で、テーマの変更やプラグインのインストール、WordPress一般設定、ユーザー管理といったシステム根幹に関わるメニューには一切アクセスできません。そのため、Webメディアのデスク、インハウスエディター、外部の編集プロダクションなど、記事の品質チェックと公開フローを統括するリーダーに付与するのに最適な権限です。
3. 投稿者(Author):自作記事の作成・編集・公開・メディアアップロード
投稿者(Author)は、「自分の記事に限定して」自由に執筆・公開・メディア管理ができる権限です。
主な権限内容は以下のとおりです。
- 自分が執筆した記事の作成・編集・保存
- 自分が執筆した記事の即時公開・公開予約
- メディアライブラリへの画像・ファイルのアップロード(自作記事への挿入)
- 自分が公開した記事の削除
投稿者は、他人が書いた記事を閲覧・編集・削除することはできません。また、固定ページの作成やカテゴリーの新規作成権限も持っていません(既存のカテゴリーを選択することは可能)。
社内ライターや専属ライターなど、レビューなしでそのまま記事を公開して問題ない信頼できる執筆者に割り当てられます。ただし、公開ボタンを自身で押せるため、事前の社内校閲やダブルチェックを徹底したい体制では、次に紹介する「寄稿者」のほうが適しています。
4. 寄稿者(Contributor):記事の下書き作成・編集(公開権限なし・レビュー必須)
寄稿者(Contributor)は、記事の下書き作成と編集のみが許可された権限グループです。
主な特徴と制限事項は以下のとおりです。
- 新しい投稿の作成、下書き保存、レビュー待ちとしての送信
- 自身が作成した下書き記事の編集
- 記事を直接公開する権限はない(「公開」ボタンではなく「レビュー待ちとして送信」が表示される)
- 一度承認・公開された自身の記事を編集・削除する権限はない
- 標準ではメディアライブラリへの画像アップロード権限を持たない
寄稿者が記事を書き終えたら「レビュー待ちとして送信」ステータスとなり、編集者または管理者が内容を確認して公開承認を行います。このワークフローにより、誤った情報の公開やSEO・表記ルールの逸脱を未然に防ぐことができます。
外部の業務委託ライター、クラウドソーシング経由の執筆者、ゲストブロガーには、原則としてこの「寄稿者」権限を割り当てるのがセキュリティおよび運用上のベストプラクティスです。
5. 購読者(Subscriber):プロフィール閲覧・コメント投稿のみの閲覧専用権限
購読者(Subscriber)は、WordPressの管理画面にログインできるものの、コンテンツの作成や編集権限を一切持たない閲覧専用の権限です。
主な機能は以下のとおりです。
- 自身のユーザープロフィール(パスワードや表示名など)の確認・変更
- ログインユーザー限定記事の閲覧(会員制サイトや限定公開コンテンツ)
- コメント投稿時の名前・メールアドレスの自動入力
記事の投稿や管理メニューは左サイドバーに一切表示されません。会員限定記事を配信するポータルサイトや、コメント投稿に会員登録を必須とするコミュニティサイトなどで一般会員用に活用されます。通常のオウンドメディアやブログ運用では、外部の作業者に購読者を付与することはほとんどありません。
なぜ「全員管理者」が危険なのか?権限の過剰付与が招く重大セキュリティリスク
多くのWordPress運用現場で散見されるのが、「設定が面倒だから」「外部委託先に権限が足りないと言われたから」という理由で、関わるスタッフや外部業者全員に管理者権限を付与してしまうケースです。
しかし、セキュリティの観点から見ると、「全員管理者」はサイトの鍵を無施錠のまま放置しているのと同義であり、極めて危険な状態です。ここでは、権限の過剰付与が引き起こす具体的なリスクを解説します。
1. 外部委託先・ライターからの管理画面乗っ取りやバックドア設置リスク
管理者権限を与えられたユーザーは、新規ユーザーの作成やプラグインのインストール、テーマ編集など、サーバー内のファイルやデータベースを直接操作できるレベルの自由度を持ちます。
もし管理者権限を付与した外部ライターや業務委託先の端末がマルウェアに感染したり、パスワードが使い回されていて漏洩したりした場合、攻撃者はその管理者権限を使って瞬時に以下のような破壊工作を行います。
- 悪意ある管理者ユーザーの密かな追加(自身のアカウントが消されてもアクセスし続けられる裏口の作成)
- バックドアを含む不正プラグインやPHPファイルのアップロード
- 既存の管理者アカウントのメールアドレス・パスワードの書き換え(正規の管理者の締め出し)
- サイト訪問者を不正なフィッシングサイトへ転送するリダイレクトコードの埋め込み
特に外部の委託先は自社のセキュリティ管理下(VPNや専用端末、パスワードポリシーなど)にないことが多いため、委託先経由でインシデントが発生する「サプライチェーン攻撃」のリスクが跳ね上がります。
2. 操作ミスによるテーマ・プラグイン誤削除やサイト停止障害
セキュリティ侵害のような悪意がなくとも、単なる操作ミスによってサイト全体がクラッシュするリスクも常に存在します。
管理者権限を持つユーザーは、管理画面から以下の操作をワンクリックで行えてしまいます。
- 稼働中の必須プラグインの誤停止や誤削除
- テーマファイルやCSS、functions.phpの誤編集による致命的なPHP構文エラー(ホワイトスクリーン・オブ・デス: 画面真っ白障害)
- パーマリンク設定の変更による全ページのURLリンク切れやSEO評価の壊滅
- サイトアドレス(URL)の誤変更による管理画面へのアクセス不能
WordPressに不慣れなスタッフやライターに管理者権限を渡していると、「ちょっと見た目を変えようとした」「不要だと思ってプラグインを無効化した」といった些細な行動がサイトの大規模障害に直結します。権限を限定することは、外部からの脅威を防ぐだけでなく、内部のヒューマンエラーからサイトを守るためのセーフティネットでもあるのです。
サイトを守る「最小権限の原則(PoLP)」に基づいた実践的運用ルール
WordPressサイトのセキュリティを強固に保つための基本方針が、情報セキュリティの国際標準でもある「最小権限の原則(PoLP: Principle of Least Privilege)」です。
最小権限の原則とは、「あるユーザーが自身の担当業務を遂行するために必要となる、最低限の権限のみを付与し、それ以上の過剰な権限は一切与えない」という考え方です。
この原則をWordPressの実務に落とし込むための4つの運用ルールを策定しましょう。
1. 役割別の推奨権限割り当て基準(外部ライターには寄稿者を原則適用)
サイトに関わるメンバーの役割に応じて、付与すべき権限をあらかじめルール化しておきます。
| 役割 | 推奨権限グループ | 割り当ての理由と方針 |
|---|---|---|
| 外部委託ライター | 寄稿者(Contributor) | 勝手な公開や他記事の改変を防ぎ、必ず社内レビューを経由させるため。 |
| 社内専属ライター | 投稿者(Author) | 画像の追加や自作記事の自律的な公開を許可し、執筆効率を高めるため。 |
| 編集長・校閲デスク | 編集者(Editor) | 全記事の品質チェック、カテゴリー整理、コメント対応を一括管理するため。 |
| システム・開発責任者 | 管理者(Administrator) | テーマ・プラグインの更新、コア設定、保守管理を行うため。 |
| SEOコンサルタント | 編集者 または カスタムロール | 記事のメタ情報や見出しを確認・編集する権限のみを与え、システム設定には触れさせない。 |
特に注意すべきは「外部ライターには例外なく寄稿者を適用する」という点です。「画像を記事に直接入れたいから投稿者にしてほしい」と要望されることがありますが、その場合は安易に投稿者に格上げするのではなく、後述するプラグインを使って「寄稿者のまま画像アップロード権限のみを追加する」手法を取るのが安全です。
2. 複数人運用における管理者アカウントの人数上限(原則1〜2名)
管理者(Administrator)アカウントは、原則として常時1名、予備を含めて最大でも2名程度に制限してください。
複数人でサイトを運用する場合によくある悪習が、「admin」というアカウントをチーム全員で共有することです。アカウントの共有には以下の致命的な欠陥があります。
- 誰がいつ記事を消したのか、設定を変更したのかの監査ログ(アクセスログ)が追跡できない
- 誰か1人が退職・離脱した際にパスワードを変更すると全員の業務が止まるため、パスワード変更が後回しになり放置される
- パスワードの漏洩経路が特定できない
管理者アカウントは個人ごとに発行し、日常的な記事執筆や編集作業では管理者権限を使わず、専用の編集者アカウントでログインして作業する(特権アカウントの日常使いを避ける)運用が推奨されます。
3. パスワードの安全な発行と共有の禁止
新規ユーザーを追加する際、管理者が簡単な初期パスワード(例: `password123!` や社名など)を設定し、それをチャットツールやメールの平文で相手に伝えるのは重大なセキュリティ違反です。
WordPress標準のユーザー招待機能を活用しましょう。
- 管理画面の「ユーザー」→「新規追加」を開く
- ユーザー名とメールアドレスを入力する
- 「ユーザーに通知を送信」の「新しいユーザーにアカウントについてのメールを送信します」にチェックを入れる
- 追加ボタンを押すと、WordPressからユーザー宛てにパスワード設定用のワンタイムURLが自動送付される
これにより、管理者が相手のパスワードを知る必要がなくなり、ユーザー自身が推測されにくい強力なパスワードを個別に設定できます。また、パスワード管理ツール(1PasswordやBitwardenなど)の利用をチーム内で義務付けることも有効です。
4. 退職者・プロジェクト終了時のユーザー即時削除・権限剥奪チェックフロー
外部ライターとの契約終了、委託先の制作会社の納品完了、社内スタッフの異動・退職が発生した場合は、その日のうちにアカウントを無効化または削除してください。不要になった「休眠アカウント」は、攻撃者にとって最も狙いやすい侵入口となります。
WordPressでユーザーを削除する際は、以下の点に注意してください。
- 投稿データの帰属変更: ユーザー削除時に「すべてのコンテンツを消去しますか?それとも別のユーザーに関連付けますか?」というダイアログが表示されます。ここで誤って「すべてのコンテンツを消去」を選ぶと、そのユーザーが執筆した過去記事がすべて削除されてしまいます。必ず「すべてのコンテンツを次のユーザーに関連付ける」を選択し、サイトの代表者や公式アカウントに記事の所有権を引き継いでください。
- 一時的な作業中断時の権限降格: アカウントを完全に削除してよいか判断がつかない場合は、いったん権限グループを「購読者」に変更しておくことで、コンテンツや管理画面への介入を即座にブロックできます。
プラグインを使ったユーザー権限の高度なカスタマイズ手順
WordPressの標準権限グループはよく考えられていますが、実務の現場では「あと少しだけ権限を調整したい」という要望が頻繁に生じます。
代表的な例が次の2点です。
- 「外部ライター(寄稿者)に、記事公開はさせたくないが、画像(メディア)のアップロードだけは許可したい」
- 「編集者に記事の管理は任せたいが、テーマのカスタマイザーやウィジェットには触らせたくない」
こうした標準機能の隙間を埋めるため、信頼性の高い定番プラグインを活用してユーザー権限(Capabilities)を細かくカスタマイズする手順を解説します。
1. 「User Role Editor」を使った個別権限(Capabilities)の追加・剥奪手順
「User Role Editor」は、世界中で長年利用されている最も知名度の高い権限カスタマイズプラグインです。既存の権限グループに対して、個別の権限(Capability)をチェックボックス単位で追加・削除できます。
実務で最も要望が多い「寄稿者(Contributor)に画像のアップロード権限のみを付与する」設定手順を例に解説します。
- WordPress管理画面の「プラグイン」→「新規追加」から「User Role Editor」を検索してインストール・有効化する
- 管理画面の左メニュー「ユーザー」→「User Role Editor」を開く
- 画面上部の「ロールを選択してその機能を変更」プルダウンから「寄稿者(Contributor)」を選択する
- 右側のコア機能リストまたはクイックフィルターから「upload_files」を検索する
- 「upload_files」のチェックボックスにチェックを入れる
- 画面右上の「更新」ボタンをクリックし、確認ダイアログで「はい」を選択する
この設定を行うだけで、寄稿者の「勝手に記事を公開できない(下書き保存・レビュー送信のみ)」という安全なワークフローを維持したまま、記事中にアイキャッチ画像や本文画像を自由に挿入させることが可能になります。投稿者へ格上げする必要がなくなるため、セキュリティレベルを落とさずに執筆効率を劇的に向上させられます。
2. 「Members」プラグインによる独自権限グループの新規作成
既存の5大ロールを直接改変したくない場合や、「外部SEOアドバイザー」「監修医師」「翻訳スタッフ」といったプロジェクト独自の役割を作りたい場合には、「Members – Membership & User Role Editor」プラグインが最適です。
独自権限グループ(カスタムロール)を新規作成する手順は以下のとおりです。
- 管理画面から「Members」プラグインをインストール・有効化する
- 左メニューに追加された「Members」→「Roles」を開き、「Add New Role」をクリックする
- 「Role Name(ロール名)」に分かりやすい名称(例:
external-reviewer)を入力する - 左側のタブ(General, Posts, Pages, Custom Post Typesなど)から、許可したい権限に「Grant(許可)」をチェックする
- 新規ロールを保存する
新規ロールを作成することで、WordPressの標準ロールを汚さずに管理でき、不要になった際にはそのカスタムロールごと一括削除できるため、運用管理が非常にシンプルになります。
3. 編集者から「テーマ編集」「外観」「プラグイン設定」のみを確実に制限する方法
一部のテーマやプラグインは、管理者だけでなく「編集者(Editor)」に対しても管理メニューを表示し、設定変更を許可してしまうケースがあります。たとえば、SEOプラグインの設定やテーマのオプション設定を編集者が誤って変更すると、全社のマーケティング施策に悪影響を及ぼす恐れがあります。
「Adminimize」プラグインや「User Role Editor」の高度な設定機能を利用することで、編集者ユーザーの管理画面から特定のメニュー項目(外観、プラグイン設定、テーマ設定など)を非表示にし、アクセス権限を確実に遮断できます。
記事の執筆・校閲に集中すべきスタッフには、執筆に関係のないメニューを視界から消してあげることで、操作ミスの防止だけでなく作業導線のすっきりとした快適な執筆環境を提供できます。
4. カスタム投稿タイプ別の閲覧・編集権限の分離設定
コーポレートサイト等で「お知らせ」「導入事例」「採用情報」「製品カタログ」などをカスタム投稿タイプで分けて運用している場合、担当部署ごとに編集権限を分離したいケースがあります。
たとえば、「人事担当者には『採用情報』のみを編集させ、通常のお知らせや事例記事には触らせたくない」という場合です。
カスタム投稿タイプを定義する際(register_post_type 関数)、capability_type パラメータを独自の名称(例: job_offer)に指定したうえで、MembersやUser Role Editorでその投稿タイプ専用の権限(edit_job_offers, publish_job_offers 等)を特定ロールにのみ付与することで、投稿タイプごとの厳格なアクセス制御が実現します。
開発者向け: current_user_can() による安全な認可・権限チェック設計
WordPressのテーマ開発や独自プラグイン開発、受託開発を行うエンジニアにとって、ユーザー権限のチェック(認可: Authorization)は避けて通れないセキュリティの必須項目です。
実装時の最も重要かつ頻出のアンチパターンと、安全なコード設計手法を確認しましょう。
1. ロール名ではなく権限(Capability)で判定するセキュアコーディング手法
WordPressには、現在のログインユーザーが特定の操作を実行できるかどうかを判定する関数として current_user_can() が用意されています。
ここで開発者が犯しがちな重大な過ちが、「ロール名(administratorやeditorなど)を直接引数に渡して判定してしまうこと」です。
// 【非推奨・バッドノウハウ】ロール名で判定している例
if ( current_user_can( 'administrator' ) ) {
// サイト設定の更新処理など
}
なぜロール名での判定が危険なのでしょうか。理由は以下の2点です。
- プラグインによるロール改変への脆弱性: 前述のように、実務ではUser Role Editorなどで既存ロールの権限がカスタマイズされたり、カスタムロールが新設されたりします。ロール名でハードコードしていると、適切な権限を持つカスタムロールのユーザーが締め出されたり、逆に権限を剥奪されたはずのユーザーが処理を実行できてしまう不整合が生じます。
- 意図しないマルチサイトでの動作異常: マルチサイト環境では「特権管理者(Super Admin)」と単一サイトの「管理者」で挙動が異なる場合があり、ロール名判定ではセキュリティホールを生む要因になります。
安全な実装では、必ず「権限(Capability)」を指定して判定します。
// 【推奨・セキュアコーディング】権限(Capability)で判定している例
if ( current_user_can( 'manage_options' ) ) {
// 管理者レベルの設定更新処理
}
if ( current_user_can( 'edit_others_posts' ) ) {
// 他人の記事を編集できる権限(編集者以上)の処理
}
サイト全体の設定変更には manage_options、記事の編集処理には edit_posts や edit_others_posts など、実行しようとしているアクションに直結するCapabilityを指定するのがセキュリティの鉄則です。
2. 権限チェックの詳細実装ガイド
管理画面のサブメニュー追加時の認可設定、REST APIエンドポイントの permission_callback 実装、AJAX処理時の権限検証など、現場で直面するセキュアな実装手法については、以下の専門解説記事で詳細なコード例とともに徹底解説しています。開発や保守に携わる方は必ず合わせてご確認ください。
あわせて読みたい:current_user_can()によるWordPress権限チェック実践マニュアル
アカウント乗っ取り・不正ログインを防ぐセキュリティ強化策
ユーザー権限をいくら適切に設定していても、アカウントそのものが外部から不正ログインされたり乗っ取られたりしてしまっては意味がありません。特に管理者や編集者といった上位権限アカウントは、攻撃者からの格好の標的となります。
権限設計とセットで必ず導入すべき3大セキュリティ対策を押さえておきましょう。
1. ログインユーザー名(ID)の露出防止と隠蔽対策
WordPressは初期状態のままだと、ログインID(ユーザー名)が外部から容易に特定されてしまう構造を持っています。
具体的には、以下のような経路で第三者にログイン名が筒抜けになります。
https://example.com/?author=1にアクセスすると、投稿者アーカイブのURL(/author/username/)へリダイレクトされ、スラッグとしてユーザー名が表示される- WordPress REST API(
/wp-json/wp/v2/users)にアクセスすると、登録されているユーザー一覧とスラッグがJSON形式で取得できる - 記事の投稿者名(著者情報)にログインIDと同じ文字列がそのまま表示されている
攻撃者は「ログインID」と「パスワード」の2つの組み合わせを探そうとしますが、ログインIDがあらかじめ分かってしまえば、あとはパスワード総当たり(ブルートフォース攻撃)に集中するだけで済んでしまいます。
ログインユーザー名の露出を防ぎ、外部から見えないように隠蔽する具体的な対策手順については、以下の記事で解説しています。
あわせて読みたい:WordPressのユーザー名(ログインID)を隠す漏洩防止ガイド
2. 2段階認証(2FA)の必須化
パスワードがどんなに強固であっても、フィッシング詐欺や他サイトからの情報流出によってパスワードが漏れる可能性はゼロにはできません。
そこで、不正ログインを根本から遮断するために必須となるのが「2段階認証(2FA: Two-Factor Authentication)」です。ログイン時にパスワードに加えて、スマートフォンアプリ(Google Authenticatorなど)に表示されるワンタイムパスワードの入力を求める仕組みです。
特に管理者や編集者の権限を持つユーザーに対しては、2段階認証の設定を義務付ける運用を徹底してください。仮にIDとパスワードの両方が漏洩しても、手元の認証デバイスがなければログインできないため、不正アクセス被害の大部分を未然に防ぐことができます。
あわせて読みたい:WordPressに2段階認証(2FA)を設定する手順とおすすめプラグイン
3. 万が一の管理者権限乗っ取り時の奪還・緊急復旧フロー
どんなに対策を講じていても、ゼロデイ攻撃や未知の脆弱性、人為的ミスによって万が一管理者権限を乗っ取られてしまう可能性は否定できません。
攻撃者は侵入後、正規の管理者のメールアドレスやパスワードを書き換え、元の管理者アカウントを削除してログイン不能に追い込むのが典型的な手口です。この状態になると、WordPressのログイン画面からのパスワードリセットは機能しません。
管理画面から完全に締め出された場合でも、レンタルサーバーのコントロールパネルやphpMyAdminからデータベース(MySQL)に直接アクセスし、wp_usersテーブルやwp_usermetaテーブルを操作することで、管理者アカウントを安全に再作成・奪還することが可能です。パニックに陥る前に、緊急時の復旧手順を事前に把握しておきましょう。
あわせて読みたい:WordPress管理者権限の乗っ取り被害からの緊急復旧マニュアル
まとめ:適切な権限設計でWordPressの安全なチーム運用を実現しよう
WordPressを複数人のチームや外部パートナーと運用する際、セキュリティの成否を分けるのは「権限設計」です。
最後に、安全な運用のためのセルフチェックリストをまとめました。
- 管理者アカウントの保有者は原則1〜2名以内に絞られているか?
- 外部ライターには原則として「寄稿者(Contributor)」を付与しているか?
- 画像アップロードが必要な外部ライターには、投稿者への安易な格上げではなく「User Role Editor」で
upload_filesのみを付与しているか? - 1つの管理者アカウント(adminなど)を複数人で使い回していないか?
- 退職者や契約終了した外部パートナーのアカウントは即日無効化・削除しているか?
- 管理者・編集者アカウントに2段階認証(2FA)を必須化しているか?
- ログインユーザー名が著者アーカイブやREST APIから露出していないか?
- 独自開発のプログラムではロール名ではなくCapability(権限)で判定しているか?
「最小権限の原則」を日頃から徹底することで、人的な操作ミスを大幅に減らし、万が一の不正ログイン時にも被害を最小限に抑えることができます。ぜひ自社サイトのユーザー一覧を今すぐ見直し、安全なチーム運用体制を整えてください。
無料診断ツール「MozCheck」で自社サイトのアカウントセキュリティと脆弱性を点検
「自社サイトのログイン画面やREST APIが露出していないか不安」
「使っているプラグインやWordPress本体にセキュリティ脆弱性がないか確認したい」
そう思われた方は、WordPressサイトの安心診断ツール「MozCheck」をぜひご活用ください。
MozCheckは、サイトのURLを入力するだけで、セキュリティ設定の不備、プラグインの脆弱性、バージョンの陳腐化、表示速度などを網羅的に自動診断し、具体的な改善ポイントをわかりやすいレポートとして提示する無料診断サービスです。
アカウント管理の強化と合わせて、サイト全体の健全性を定期的にチェックし、安全なWordPress運用を継続していきましょう。
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